アクリルへの印刷方法とそれぞれの特徴についてご説明いたします。
【目次】
アクリルの性質と用途
アクリルは透明度の高い合成樹脂で、板材はアクリルガラスとも呼ばれることがあります。ガラスとの違いは、アクリルは割れにくいが細かい傷が付きやすく、反対にガラスは割れやすいが傷が付きにくいという性質にあります。また、アクリルはガラスに比べて軽く、サイズの大きな額縁に嵌める窓カバーや、水族館にある大型魚の水槽等で活用されている素材です。
近年多い巨大な水槽はアクリルガラス製
資材の色も白・乳半(乳白色)・黒や、その他の多彩なカラーから選択することができますが、一般的に透明なアクリルが多く活用されています。
アクリルはノベルティやキャラクターグッズでも人気が高く、キーホルダーやコースター、定規等に使われています。アクセサリー等の高級品の卓上スタンドや、アクリル板に印刷物を挟んで掲示するポスターフレームにも使われ、サイン&ディスプレイ業界では、企業の社屋壁面に設置する看板・表札や、LEDを使った発光ディスプレイ等に活用されています。近年は新型肺炎に起因するソーシャルディスタンス対策として、飛沫感染を防ぐアクリルパーテーションの需要も増えています。
やりたいことによって印刷方式は変わる
アクリル板・アクリル製品へプリントする方法としては、UVインクジェット印刷やシルクスクリーン印刷等が挙げられます。
フルカラー・小ロット・大判のアクリル板への印刷には、UVインクジェットプリントを推奨いたします。版の作成を必要としないため、納期の短縮化が図れます。
ロットが大きく、1色程度の使用であれば、コストパフォーマンスとしてシルクスクリーン印刷に軍配が上がります。サイズの小さいフォントや細いラインを印刷したい場合や、アクリル製品の曲面にプリントしたい場合はパッド印刷という方式が向いていますが、印刷範囲が大きいものは苦手です。用途や数量に応じて最適な印刷方式をご選択ください。
これら3つのプリント方式ではホワイトインクが使用できるので、透明アクリルに下地として印刷することで、全体あるいは部分的に不透明化させることも可能です。下記の写真は透明のアクリル板にホワイトインクを印刷したサンプルです。背景の右半分は黒い卓面が透けて見えますが、クマノミはシルエットに沿って最初に白地を印刷しています。そのため卓面の色に影響を受けず、発色の良い表現ができています。
ホワイトインクの効果
透明なクリアインクもアクリルとの親和性が高く、UVインクジェットプリンタでクリアインクを濃度を調整して印刷すると、曇りガラスのようなマットな表現が可能になります。また、アクリル板にテキストや模様を透明なインクで印刷すると高級感のある仕上がりになります。
下記の写真は3mm厚のアクリル板を2枚組み合わせて製作したオリジナルの表彰プレートです。前面のアクリル板には受賞のメッセージや飾り枠を、後ろのアクリル板にはクリアインクでロゴマークを印刷しています。
表彰楯にクリアインクを活用した事例
グラデーションによる表現は、シルクスクリーン印刷やパッド印刷でも不可能ではないですが、レインボーカラーのような多色使いなら、UVインクジェット印刷が強みを発揮します。
虹色のグラフィックを印刷したアクリル名刺
また、名札やバッジ等の名入れ製品のように、すべてに異なる要素を印刷するバリアブルプリントも、UVインクジェット印刷ならではの特色になります。例えば、イメージ・パーソナライズ技術を活用することによって、大切なお客様向けに、世界にひとつしかないアクリルカレンダーを贈ることもできます。(イメージ・パーソナライズについては「UniSnap(ユニスナップ)」のページをご覧ください)
アクリル印刷に関するテクニック
こすれることによって印刷されたインクが削られるのを防ぎたい場合は、透明アクリルの裏面からプリントする方法があります。アクリルそのものが防護カバーとなって、印刷面を擦過からガードしてくれます。
また、グラフィックをレイヤー分けし、厚いアクリルの両面にグラフィックを別々に印刷することによって、奥行きのある表現も可能になります。アクリルの裏面からプリントする場合、印刷用のデータは左右反転させる必要がありますが、弊社にて編集作業を行なわさせていただきます。
店頭に設置するメニュー表等、内容が頻繁に変わる予定がある場合や、アクリル板を再利用したい事情がある場合には、ウィンドウフィルム等の再剥離可能な透明シール資材へ印刷して貼り付ける方法をお奨めします。弊社では大判のウィンドウフィルムへの印刷にも対応しており、アクリル看板に貼付けて納品した実績もございます。
お持込みの際の注意点
アクリル板や製品をお客様がお持込みになる場合の注意点としては、資材のメーカーや製品、表面加工の有無によっては印刷適性が低い場合もございます。仕上がりサイズにカットされたアクリル板や、角丸・穴あけ等の加工がされたアクリル材でもお引き受けいたしますが、お持込みになる場合は本番前に印刷テストをお薦めいたします。
インクを使わない「疑似印刷」も
インクを使わないグラフィック表現方法としては、レーザー彫刻という手段もございます。これはレーザー光によって刃物を使用せずにアクリルの表面を削る加工で、お好きな文字やイラスト・装飾を表現することができるものです。
ドット(網点)の密度や削る深さによって、濃淡の表現も可能です。下記の写真を見ると白っぽく見える部分がアクリルを削った箇所です。人物写真等、かなり精細なグラフィックの表現も可能です。
アクリル彫刻サンプル
弊社ではUVインクジェット印刷機によるアクリルへの印刷、およびレーザー加工機によるアクリル彫刻、デジタルカッティングマシーンによるカッティング加工を承っております。仕様を決めるための試作品・テスト印刷のみのご発注も可能です。
「Adobe Illustrator」をお使いの方は、ファイルは「.ai」形式、カラーモードはCMYKでご入稿ください。印刷用のデータをお作りになれない場合でも、弊社にはデザイナーが常駐しておりますので、お客様のご要望をヒアリングの上でデザインからお引き受けいたします。「オリジナルでアクリル製のパネルを作りたい」等のご希望がございましたら、制作から印刷まで一貫してお引き受けいたします。
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